ピンポンとチャイムが鳴った。以前ならば誰だろうとカメラで覗いたかもしれない。しかしこの辺りには向かいの家と隣の家、その隣しか人家はない。昼過ぎに来たのは郵便配達で以前の住所から転送されてきた書留を持ってきた。転送サービスがようやく機能したようだった。 午後遅くに又チャイムが鳴った。ドアを開けて驚いた。しかし僕は彼が誰なのか直ぐにわかった。ずっとこの日を待っていたのだ。 信州は飯山の地に鍋倉山という1289mの峰がある。そこは越後と信州の国境稜線で「信越トレイル」という名のハイキングルートが在る。鍋倉山はその一部に過ぎないが好事家はこの峰を逃さない。JR飯山線は豪雪の地を行く鉄道で余りの積雪の多…