ledilettante.hatenablog.com 再読。スウェーデンボルグの「信仰の思想を凌駕せるはなほ思想の本能を凌駕せるがごとし」という言葉が、本物語のすべてを表している。「学問」に裏付けられたセゼエルのヘーゲル流弁證法は、低俗な物質主義の権化であるボノメに対し猛威を逞しくするが、はたクレエルの「信仰」を前にしては無力。 本物語で愉しむべきはリラダンの韜晦趣味である。血に於ても精神に於ても比肩なき「貴族」たるリラダンが、近代精神の奥心、トリビュラ・ボノメの口を通して、ブールジョワの論理を喋々する。この逆説。リラダンの本質を弁えない読者は作者を見誤ること疑いない。だがリラダンを知る者に…