今回ご紹介するのは『ブラームスの協奏曲とドイツ・ロマン派の音楽』西原稔(著) です。2020年10月 芸術現代社。同じく西原先生の著書『《ドイツ・レクイエム》への道: ブラームスと神の声・人の声』と合わせて購入しました(なおドイツレクイエムの本は現時点で未読です)。 ブラームスの協奏曲とドイツ・ロマン派の音楽 作者:稔, 西原 芸術現代社 Amazon 早速レビューに入ります。以下、ネタバレが含まれます。ご了承頂けるかたのみ「続きを読む」からお進みください。
ピアノ教室の風景 最近もっぱら私の研究題材は「こどものための音楽」である。しかも私はこのブログで同じ題材で一つ記事を書いている。 nu-composers.hateblo.jp 今回はそれをさらに深く研究し、体系化を試みてみたというわけである。 このジャンルの音楽は教育場面で用いられる楽曲なので軽く見られがちなジャンルではあるが、これが研究してみると実に深いのだ。様々な作曲スタイルが混在しており、芸術なのか単なる教育用の教材なのか、はたまた大衆音楽なのかもわからないほどに玉石混交でありながら、ちゃんと一つのジャンルを築き上げている。 こういった指向のジャンルには吹奏楽も挙げられるだろうが、あの…
どれだけ長くクラシック音楽の仕事をしている私でも、 知らないことはたくさんあります。 そして、先日、ひょんなことから、ある作曲家の名前を知ることとなりました。 その名は、ヴォルデマール・バルギール(1828-1897:ドイツ) どんな人物なのかを知るために、Wikipedia記事を貼り付けておきます。 ja.wikipedia.org この人物、私はこれまでに聞いたこともなかったのでした。 あ~、なんて不勉強な私なのだ! 実は、ある演奏会のインフォメーションに彼の作品があって、 どんな曲なんだろうかと調べていました。 すると、別の作品でアンテナに引っかかったものがありました。 チェロと管弦楽の…
www.youtube.com 新国立劇場の最上席での観劇。本歌劇の半音階的な重音進行や不協和音の構成は、後期ドイツロマン派を予感させる。内面的響きが特徴である。 前奏曲、「憧れの動機」に始まり、そこからとめどなく流れる美の奔流を受けて、私は忽ち夢うつつ。イゾルデといふ気高き女をまへにして、至高の忘我。 第一幕、屈辱に甘んずるを佳しとせず、一死以て復讐を果さんとする騎士さながらの戦闘精神を顕した強き女イゾルデ。第二幕、愛の偉大さに酔ひしれる歓喜のイゾルデ。第三幕の「愛の死」、トリスタンの死に相対し失意の淵に沈むイゾルデ。 「気高さ」てふ時代遅れの概念の、純然な結晶たる彼女の一挙一動が、私を恍惚…
プログラム ジョン・アダムズ:Must the Devil Have All the Good Tunes? グスタフ・マーラー:交響曲第1番ニ長調「巨人」 プログラム 2019年3月20日(水) ジョン・アダムズ:Must the Devil Have All the Good Tunes? グスタフ・マーラー:交響曲第1番ニ長調「巨人」 ピアノ:ユジャ・ワン 指揮:グスターボ・ドゥダメル(ロサンジェルス・フィルハーモニック音楽監督) 管弦楽:ロサンジェルス・フィルハーモニック ジョン・アダムズ:Must the Devil Have All the Good Tunes? 《Must th…
「春」といえば気分が晴々して心躍る季節ですが、私の住む地域では朝晩に気温がぐっと下がり、先日は積雪を伴う降雪もあり、まだ冬の面影を残しているなぁ~と感じます。そういったときは「死」や「怯え」などを時として感じるシューベルトやヴォルフのリートではなくて、シューマンのリートをききたい気分になります。 今週はそのドイツ・ロマン派を代表する作曲家のひとりロベルト・シューマン(1810~1856)のリーダークライス作品39です。 同名の作品24という全9曲からなる作品などと共に1840年、彼の生涯では「歌の年」といわれる時期にまとめて作曲されました。その後手は加えられたそうですが。 「リーダークライス」…
幽霊奇譚 ドイツ・ロマン派幻想短編集 個人的評価★★★★★ 1 どんな短編集? ナポレオン時代にドイツで話題なった幽霊の書全5巻(1810〜1815年)に、そのフランス語訳ファンタスマゴリアーナ収録の作品を反映した構成のアンソロジー全15作品収録。訳者解説が充実していて、ドイツのロマン派幻想文学史みたくもなっている。ファンタズマゴリアーナは、メアリシェリー(フランケンシュタイン)やポリドリ(吸血鬼)らがスイスのレマン湖の別荘に集まった際に読まれ、著作を書くきっかけになった本として有名 収録作は 『魔弾の射手』ヨハン・アウグスト・アーベル 『先祖の肖像画』ヨハン・アウグスト・アーベル 『髑髏』フ…
ラヴジョイの続きです。 cruel.hatenablog.com 最後の第11講では、この存在の連鎖とか充満の原理、さらにその元になっている神様の異世界性とこの世性の両立が不可能だというのがあらわになって、それが一気に忘れ去られる様子が述べられていた。 cruel.hatenablog.com 今回の第10講は、その一つ手前ということで、その解体の先触れみたいなのがロマン主義として出てきたか、あるいはこの世性みたいなのが嫌われて、全然別の世界を夢想する異世界性指向みたいなのがロマン主義になったとかいう話かなー、と思っていた。 結果で言うと、ぜんぜんちがった。むしろ、存在の連鎖と充満性を強調する…
今回は、2月のEテレ「100分de名著」で取り上げられた『偶然性・アイロニー・連帯』の2つ目のキーコンセプトである「アイロニー」について、テキストの中で朱氏が解説している内容を私なりに大胆に要約しようと思う。特に「リベラル・アイロニスト」というあり方に関する内容が中心になるが、まずはローティの言う「アイロニー」という言葉の意味から入っていこう。 アロニーという言葉は一般的には「皮肉」「冷笑的」「斜に構えた」などというネガティブな意味合いを含んでいるが、ローティが言う「アイロニー」は18世紀末~19世紀はじめのドイツ・ロマン派の批評家シュレーゲルらが用いた「ロマンティク・アイロニー」という言葉に…
清水茂『詩とミスティック』(小沢書店 1996年) 今年に入って、清水茂を、『詩と呼ばれる希望』、『遠いひびき』、『翳のなかの仄明り』と読んできた続きで取り上げてみました。小沢書店らしい瀟洒な造りの本です。内容は、大きく、詩とミスティックをめぐってと、戦時における文学者の態度についての二つに分けられると思います。 詩とミスティックについては、詩とミスティックの両者に共通するものを見ているわけですが、キーワードとして、夢、象徴、不可視なるもの、純粋詩、キリスト教があり、また、具体的事例として、ドイツ・ロマン派、シモーヌ・ヴェイユ、ボヌフォワ、ロマン・ロランが取り上げられていました。いくつかの論点…
76冊目『サイクス=ピコ協定 百年の呪縛』池内恵 - ウルソの読書記録 75冊目『正欲』朝井リョウ - ウルソの読書記録 74冊目『向田邦子 ベスト・エッセイ』向田邦子 - ウルソの読書記録 73冊目『神を見た犬』ブッツァーティ - ウルソの読書記録 71・72冊目『古代日本の超技術 新装改訂版』・『古代世界の超技術 改訂新版』志村忠夫 - ウルソの読書記録 番外編『フラジャイル(漫画)にユーイング肉腫が出てたので読んだ』※希少癌理解促進のため。治療記録ブログと同じ内容 70冊目『魔女狩りのヨーロッパ史』池上俊一 - ウルソの読書記録 69冊目『冷静と情熱のあいだ Rosso』江國香織 - ウ…
誰しもワーグナー『トリスタンとイゾルデ』を論じるとなれば、ニーチェの『この人を見よ』の《あれこれ考え合わせてみると、私はヴァーグナーの音楽がなかったら、私の青年期を持ちこたえることが出来なかったと思う。(中略)レオナルド・ダ・ヴィンチの示すあらゆる異様な魅力も、『トリスタン』の最初の一音で魔力を失ってしまうであろう》あたりの、いかに『トリスタンとイゾルデ』に麻薬的に魅了されたことから始まって(そして後年のニーチェの愛憎相半ばしたワーグナーへの毀誉褒貶のいきさつも眺めたうえで)、トーマス・マンの『リヒャルト・ヴァーグナーの苦悩と偉大』におけるショーペンハウアーの「意志と表象」、ドイツ・ロマン派の…
2024年1月28日 樫本大進 エリック・ル・サージュ デュオ・リサイタル 所沢市民文化センター ミューズ アークホール《シューマン&ブラームス 全曲ヴァイオリン・ソナタ・チクルス vol.2》ブラームス ヴァイオリン・ソナタ第1番 雨の歌ブラームス、ディートリッヒ、シューマン(合作) F.A.E.ソナタクララ・シューマン 3つのロマンスシューマン ヴァイオリン・ソナタ第2番 30歳で天下のベルリン・フィルのコンサートマスターに就任し、多くのクラシックファンをあっと言わせてから、早14年。そうか、もうそんなに月日が経っているんだな・・・。44歳という年齢は、音楽家として脂が乗り、今もっとも充実…
【世にも美しい波動の上がる音楽 22】(聴きやすくて感動的なクラシック音楽) スターシードたちの「春への憧れ」は、モーツァルトの『ピアノ協奏曲 第18番』にあり!! + 『ウルトラセブン』最終回で流れたシューマン作ピアノ協奏曲と、モロボシ・ダンの悲劇 【世にも美しい波動の上がる音楽 22】(聴きやすくて感動的なクラシック音楽) スターシードたちの「春への憧れ」は、モーツァルトの『ピアノ協奏曲 第18番』にあり!! + 『ウルトラセブン』最終回で流れたシューマン作ピアノ協奏曲と、モロボシ・ダンの悲劇 モーツァルト=スターシード説 作曲の背景 皇帝は「ブラボー!!」と叫び、父レオポルトは「感動のあ…
1816年、スイスのレマン湖畔に構えられたディオダティ荘を舞台とした記憶に残る怪談会が開催される。この歴史的な出来事なくして、メアリー・シェリーの『フランケンシュタイン』やジョン・ポリドリの『吸血鬼』といった名作は生まれなかったであろう。 少し寒さを感じさせるその夏の夜、詩人バイロンと彼の友人たちは集い、後に文学の世界に多大な影響を与える話をしていた。そこで語り合われた話の一つが、ドイツ・ロマン派の精鋭、ヨハン・アウグスト・アーペルとフリードリヒ・ラウンによる『幽霊の書』であり、これが『幻想物語集』として選ばれた怪談集である。時を経て、これらの物語は今なお色あせることなく、我々の国においても『…
「くるみ割り人形」の「ロシアの踊り」は「コサックダンス」 お菓子の国に招待される バレエ原本はフランス本 コサックダンスはウクライナが本場 チャイコフスキーもウクライナコサック家系 ジンギスカン「めざせモスクワ」のコサックダンス ウクライナのコサックダンス 今回のお話 「くるみ割り人形」の「ロシアの踊り」は「コサックダンス」 チャイコフスキー作曲のバレエ「くるみ割り人形」の中に、「ロシアの踊り」という曲があります。 お菓子の国に招待される 「くるみ割り人形」主人公のクララが、部屋の中での「くるみ割り人形対ネズミ王」の対決の時に「ネズミ王」にスリッパを投げて「くるみ割り人形」に加勢しました。 そ…