塚本邦雄(1920-2008年)は、第二次大戦後の前衛短歌運動の旗手としてよく知られる。 きっかけは、戦後まもなく歌壇・俳壇に対して突きつけられた「第二芸術論」(1946年)だった。これは短歌型文学の前近代性──日本的抒情、表現の狭小、「何を」より「誰が」詠むかを重視する解釈──を否定する評論であり、呼応する形で、塚本邦雄は「現代短歌」を模索し始める。 第一歌集『水葬物語』(1951年)は歌壇からは無視されたものの、三島由紀夫の激賞を受けた。1950年代から60年代にかけて塚本は、寺山修司や岡井隆らとともに、現代短歌の韻律・語法・情景を整備していくことになる。 その後1980年代に俵万智や穂村…