有名人・著名人の氏名や肖像が持つ経済的権益・価値を、その本人が独占できる権利のこと。
人格権に根ざした権利であるため、物や動物には認められない。
法律上明文化されていないため、範囲や定義はややあいまいなところがある。
詳細
パブリシティ権の本質は、顧客吸引力にあり、人格権に根ざすものである。
自然人が人格権に基づき、正当な理由なくその氏名・肖像を第三者に使用されない権利を持っていることから、その氏名・肖像から顧客集客力を生じる有名人は氏名・肖像から生じる経済的利益や価値を独占する権利を持っていると考えられるためである。
顧客吸引力を利用して、商品を製作するなど、経済的利益などを排他的に支配する財産的権利である。
判例
おニャン子クラブ事件(東京高等裁判所平成3年9月26日判決)
おニャン子クラブのタレントの写真や名前入りのカレンダーを無断で製作・販売した「現代キャラク」に対して、商品の販売差し止めや損害賠償などを求めた訴訟。
- 判決
- 松野嘉貞裁判長は、
「芸能人の氏名・肖像がもつかかる顧客吸引力は、当該芸能人の獲得した名声、社会的評価、知名度等から生ずる独立した経済的な利益ないし価格として把握することが可能であるから、これが当該芸能人に固有のものとして帰属することは当然のことというべきであり、当該芸能人は、かかる顧客吸引力のもつ経済的な利益ないし価値を排他的に支配する財産的権利を有するものと認めるのが相当である。」
とし、この権利を侵害した現代キャラク社に対して、販売差し止めと商品の廃棄、タレント一人当たり10万円の慰謝料支払いを命じた。
この判決によってパブリシティ権に基づく差止請求が認められた。
ダービースタリオン事件(東京地方裁判所平成14年9月12日判決)
株式会社アスキーが実在する競走馬の名前を使って家庭用ビデオゲームソフトを製作・販売したためパブリシティ権が侵害されたとして、競走馬所有者の団体が同ビデオゲームソフトの製作、販売、使用許諾等の行為の中止、及び損害の賠償を請求した訴訟。
- 判決
- 競走馬のパブリシティ権に関して、
「著名人のパブリシティ権は,前述のとおり,もともと人格権に根ざすものと解すべきであるから,競走馬という物について,人格権に根ざすものとしての,氏名権,肖像権ないしはパブリシティ権を認めることができないことは明らかである。また,控訴人らが本件各競走馬について所有権を有し,所有権に基づき,これを直接的に支配している(民法206条)ということはできるものの,単に本件各競走馬の馬名・形態が顧客吸引力を有するという理由だけで,本件各競走馬の馬名,形態等について,その経済的利益ないし価値を排他的に支配する財産的権利であるパブリシティ権を有している,と認め得る実定法上の根拠はなく,控訴人らの主張を認めることはできない。」
とし、動物(物)のパブリシティ権は認められず、控訴は棄却された。
ピンク・レディーパブリシティ権事件(最高裁判所平成24年2月2日判決)
光文社が週刊誌「女性自身」2007年2月27日号の記事で、「UFO」など5曲の振り付けを利用したダイエット法を紹介し、同社が過去に撮ったピンク・レディーの写真を無断で使用したことに対し、パブリシティ権の侵害があったとしてピンク・レディーの二人が発行元の光文社に損害賠償を求めた訴訟。
- 判決
- パブリシティ権侵害の範囲について
「肖像等を無断で使用する行為は,(1)肖像等それ自体を独立して鑑賞の対象となる商品等として使用し,(2)商品等の差別化を図る目的で肖像等を商品等に付し,(3)肖像等を商品等の広告として使用するなど,専ら肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的とするといえる場合に,パブリシティ権を侵害するものとして,不法行為法上違法となると解するのが相当である。」
という見解を示し、本件は記事内容を捕捉する目的で利用されたのであり、専ら上告人らの肖像の有する顧客吸引力の利用を目的とするものとはいえないため、不法行為法上違法であるということはできないとした。上告は棄却された。
そのほかパブリシティ権をめぐる争いの具体例
- 著名人に対するモノマネ芸
- 有名ブランド名の商標登録の先後(「ipad」先:富士通/後:アップル)
- 芸能人の肖像画をネット使用することへの規制
などがある。
肖像の管理・規制する側の主張根拠
CMなどにおいては、肖像を使用するいわばレンタル期間を制限することによりキャラクターや企業側がお互いに経済価値を維持できるため、とある。
仮に肖像の使用期間が無制限となった場合、競合企業どうしの二重イメージキャラクターが生まれたり、不祥事を起こしてしまったタレントのマイナスイメージを、企業側がいつまでも負担してしまうことになりかねない。