手術(オペ)で切除した腫瘍の味を確かめるのを事とした、例の外科医先生といい。 戦前日本の学者というのは、奇人というか、どうもマッドな香りが強い。 植物園の住人ですら、四分五裂した人体のアルコール漬け標本を平気で持っていたりする。 八田三郎のことである。 (北大植物園・博物館) 北海道大学農学部附属植物園の管理者の任を、この動物学者が帯びていたころ。同地を当代の名ジャーナリスト、杉村楚人冠が取材しに来た。 そのとき「珍しい品をお見せしよう」と持ち出したのが、前述のゲテモノだったというわけである。 以下、杉村の記事をそのまま引くと、 札幌神社に詣でゝ後植物園に八田博士を訪ふ、博士は珍しいものを見す…