一九二四年八月三日、ドイツ国民は巨大な弔事の中に居た。 欧州大戦勃発の十周年記念日である。 この日、ベルリン市に於けるあらゆる公共施設にはこぞって半旗が掲げられ、市民はそれを仰ぎ見て、逝ける偉大な帝国へ、とむらいの意を露わにしたるものだった。 (Wikipediaより、ドイツの国旗) 議事堂前では時の大統領閣下、フリードリヒ・エーベルトによる演説が先ず行われ──「ドイツは十年前祖国を護ると云ふ唯一の目的を以て銃を執って起ったのである。今後ドイツ国民は宜しく祖国復興の為に努力せられたい」──、それから続いて軍楽隊が葬列行進曲を演奏、森厳なる「民族の祭典」が執り行われて居たそうな。 演奏が完了した…