薬の開発の歴史には、数多くの偶然と発見が織り込まれている。その中でも興味深いのが、ミノキシジルのエピソードである。ミノキシジルはもともと高血圧の治療薬として開発された。血管拡張作用があり、血圧を下げる目的で投与されたが、治療中の患者に「体毛が濃くなる」という副作用が現れた。しかも、全身ではなく、頭部の毛髪が目立って増えるという報告が多く寄せられたことから、この副作用が逆に注目され、現在では発毛剤としての用途で広く利用されている。 このような「副作用から主作用へ」という転換は、薬の世界では決して珍しいことではない。たとえば、バイアグラも同様である。もともとは狭心症、つまり心臓の血管を拡張し、心臓…