その日、結璃は自宅から10分ほどのカフェにいた。 事実上女優業を引退している結璃であったが、歩合制の芸能プロダクションだけでは生活できなくなってきたことからこのカフェでアルバイトを始めたのだ。 女優としてテレビや映画の端役で出演していた頃からこのカフェには通っていたのだが、ある時いつものようにラテを注文すると店主らしき女性が声をかけてきた。 「よく来ていただいてますね! もしかして女優さんですか?」 このあたりは都心から離れた住宅街ということもあり、芸能人を見かけることはめずらしいようである。 「あ・・ハイ! 一応女優のようなことをやっています!」 “女優さんですか?”なんて声をかけられたのは…