→[6①から]わたしが出会いたいのは、広大な西部の土地から土地をめぐり渡る吟遊詩人なのです。そしてかれらにこそ、おねだりするのです。おとなしく安住する人びとが想像もできない、この世のさまざまなめぐり合わせを、おもしろおかしく、うたって聞かせてください、と。 また登場のさいは必ずロバにまたがり、のんびりとやってきてください、と。ロバのスローなテンポ、ノンシャランな歩み、これらは(誰もがすぐにかっとなり、やることなすことすべてが荒ぶれる西部劇にあって)吟遊詩人の反骨的ユーモアであり、吟遊詩人がかかげる独立独歩の旗印なのです。 『シエラ』(1950)にでてくるロンサムはまぎれもない放浪の歌うたいだ。…