後拾遺和歌集 哀傷 536 百人秀歌 53 藤原定子 一条院御時、皇后宮かくれたまひてのち、 帳の帷の紐に結びつけられたる文を見つけたりければ、 内にもご覧ぜさせよとおぼし顔に、歌三つ書き付けられたりける中に 夜もすがら契りし ことを忘れずば 恋ひむ涙の 色ぞゆかしき 口語訳 (『新日本古典文学大系・後拾遺和歌集』(岩波書店)より) 夜通し約束されたことをお忘れにならないのであったなら、私のことを恋うてくださるその涙の色が知りたいものです。 意訳 題詞: 一条天皇の御代(永延年間の頃)、皇后宮(藤原定子)が御年わずか二十四にして薨去あそばされたのち、御帳台のとばりの結び目に添へられたる文の端に…