源氏にそんな心のあることを 紫の君は想像もして見なかったのである。 なぜ自分はあの無法な人を信頼してきたのであろうと思うと 情けなくてならなかった。 昼ごろに源氏が来て、 「気分がお悪いって、どんなふうなのですか。 今日は碁もいっしょに打たないで寂しいじゃありませんか」 のぞきながら言うと ますます姫君は夜着を深く被《かず》いてしまうのである。 女房が少し遠慮をして遠くへ退《の》いて行った時に、 源氏は寄り添って言った。 「なぜ私に心配をおさせになる。 あなたは私を愛していてくれるのだと信じていたのに そうじゃなかったのですね。 さあ機嫌をお直しなさい、皆が不審がりますよ」 夜着をめくると、女…