「アイデンティティ」という言葉が広まったのは、いつ頃からだろう。 最初の頃、意味がつかみにくくて困った記憶がある。「自己同一性」と訳されたって、それでは何も分からなかった。 ▶岩波国語辞典初版(1963) には存在しないが、日国には1970年の用例が載っている。 ▶精選版 日本国語大辞典(2006) *「ごっこ」の世界が終ったとき(1970)〈江藤淳〉「なにをやっても『ごっこ』になってしまうのは、結局戦後の日本人の自己同一性(アイデンティティ)が深刻に混乱しているからである」 「自己同一性」に「アイデンティティ」(音引きなし)のルビを振っておきながら、「自己同一性」という項目がないのは、精選版…