わたしは小野不由美の短編集が好きだ。毎回読むたびに好きだなあ、と思うのだけど、最近読み返して好きだなあとしみじみ感じたのは、表題作「丕緒の鳥」と「風信」だった。 どちらも、浮世離れした人たちがどのように現実と向き合っているかを書いた物語である。 丕緒の鳥では、射儀(めでたいときに行う儀式)を司る丕緒が主人公である。彼は、長年その立場にいる中で、大事な人たちを失い、王や政に不信感しか持っていない。そんな彼が、昔の仲間であり、技術者であった簫蘭のことを思い出す。簫蘭は「嫌なことを見ていたって仕方ない。それよりきれいなものを見ていたい」と言って現実を見ようとしなかった。そんな彼女にずっと丕緒はあきれ…