🌸第4帖 夕顔🌸 いろいろに咲いた植え込みの花に心が引かれるようで、 立ち止まりがちに源氏は歩いて行く。 非常に美しい。 廊のほうへ行くのに中将が供をして行った。 この時節にふさわしい淡紫《うすむらさき》の薄物の裳《も》を きれいに結びつけた中将の腰つきが艶《えん》であった。 源氏は振り返って 曲がり角の高欄の所へしばらく中将を引き据《す》えた。 なお主従の礼をくずさない態度も 額髪《ひたいがみ》の かかりぎわのあざやかさも すぐれて優美な中将だった。 「咲く花に 移るてふ名は つつめども 折らで過ぎうき 今朝の朝顔‥ どうすればいい?」 こう言って源氏は女の手を取った。 物馴《ものな》れたふ…