春になってからは専念に源氏は 宮の五十の御賀の用意をしていた。 落《おと》し忌《いみ》の饗宴《きょうえん》のこと、 その際の音楽者、 舞い人の選定などは源氏の引き受けていることで、 付帯して行なわれる仏事の日の経巻や仏像の製作、 法事の僧たちへ出す布施《ふせ》の衣服類、 一般の人への纏頭《てんとう》の品々は 夫人が力を傾けて用意していることであった。 東の院でも仕事を分担して助けていた。 花散里《はなちるさと》夫人と紫の女王《にょおう》とは 同情を互いに持って美しい交際をしているのである。 世間までが このために騒ぐように見える大仕掛けな賀宴のことを 式部卿の宮もお聞きになった。 これまでは …