末摘花女王《すえつむはなにょおう》の手紙は 香の薫《かお》りのする檀紙《だんし》の、 少し年数物になって厚く膨《ふく》れたのへ、 「どういたしましょう、 いただき物はかえって私の心を暗くいたします。」 『着て見ればうらみられけりから衣《ごろも》かへしやりてん袖を濡らして』 と書かれてあった。字は非常に昔風である。 源氏はそれをながめながら おかしくてならぬような笑い顔をしているのを、 何があったのかというふうに夫人は見ていた。 源氏は使いへ末摘花の出した纏頭《てんとう》のまずいのを見て、 機嫌《きげん》の悪くなったのを知り、 使いはそっと立って行った。 そしてその侍は自身たちの仲間とこれを笑い…