「いろんな歌の手引き草とか、 歌に使う名所の名とかの集めてあるのを始終見ていて、 その中にある言葉を抜き出して使う習慣のついている人は、 それよりほかの作り方ができないものと見える。 常陸《ひたち》の親王のお書きになった 紙屋紙《かんやがみ》の草紙というのを、 読めと言って女王《にょおう》さんが貸してくれたがね、 歌の髄脳《ずいのう》、歌の病《やまい》、 そんなことがあまりたくさん書いてあったから、 もともとそのほうの才分の少ない私などは、 それを見たからといって、歌のよくなる見込みはないから、 むずかしくてお返ししましたよ。 それに通じている人の歌としては、 だれでもが作るような古いところが…