春昼《しゅんちゅう》、酒はよくまわる。 又太郎もつよいたちだが、佐々木にも大酒の風がある。 城内の大庭には、紅梅白梅が妍をきそい、 ここには杯交のうちに気をうかがい合う両高氏の笑いがつきない。 はからずも、 これこそ“婆娑羅”な酒《さか》もり景色か。 「ときに……」と、 又太郎からたずねた。 「ぶしつけなれど、御出家にしては余りに早すぎるお頭《つむり》、 いかなる発心《ほっしん》なあって?」 「ヤ、これですか」 佐々木は、酒照りも加えて、 一そう青々とかがやいている頭へちょっと手をやって。 「もとより出家ではおざらん。 いうならば、おつきあいの剃髪《ていはつ》とでも申すべきか」 「はて、異なお…