2023年は、ぼくにとって太宰治にゆかりのある年となった。 10月には、生家のある青森県は五所川原市に赴き、長年の憧れであった斜陽館を見てきた。一時は旅館としても使われていたとあって、その贅沢な間取りに見惚れたものだ。本でしか知らない作家に間近で出会えたような、そんな錯覚をおぼえた。 12月にその土産話を持って東京に行ったら、ちょうど太宰の愛した人道橋が今日明日にも取り壊されるという話を聞いた。太宰の暮らした三鷹に友人がいなかったら、そんなことも知らなかったかもしれない。 これもなにかの縁、と捉え、特に予定のなかったぼくは、翌日早速その橋を見に三鷹駅へと降り立った。 その日はとても天気が良かっ…