津田梅子が光源氏を嫌っていたと示す逸話が世にはある。 英訳された『源氏物語』の校正作業を頼まれて、しかし内容の卑猥さゆえに断然これを拒絶した、と。こんなのはポルノと変わりなし――と、激しく罵りさえしたと。だいたいそんな筋だった。 目下、世間はこのエピソードを専ら「ガセ」と認識している。妄想の産物、学術的な裏付けは何一つないにも拘らず、取り合わせの妙、構図自体の面白味に引っ張られ、とめどもなく拡散(ひろま)ったデマ情報であるのだと。 (Wikipediaより、津田梅子) ところがだ。明治十七年十月二十日の『今日新聞』を覗いてみると、こんな記述が目に入る。 「いづれの御時にか勝れて時めき給ふ参議在…