タケノコ夫人行状記:宇井無愁 1955年(昭30)和同出版社刊。 宇井無愁(うい・むしゅう、1909~1992)は戦後昭和期の大阪の劇作家および小説家。筆名がフランス語の「ウィ、ムッシュー」(Oui, Monsieur.=はい、旦那様)から来ているのは誰でもわかる。主に関西での活動だったので、知名度はやや低いが、ユーモア作家として知られた。これは12の短篇集で、表題のタケノコ夫人とは、終戦直後の生活物資難に対して身の回りの品物を少しずつ売って食い繋いだ「タケノコ生活」にあやかっている。これが出版された昭和30年頃には日本国民はすでに窮地を脱して、ささやかながら生活を謳歌していた。 ヒロインのタ…