「いってらっしゃい」 いつものように、そう言って夫を送り出した。 玄関のドアが閉まる音を聞きながら、 私は少しだけ物思いにふけっていた。 夫は町の小さな工場で働いている。 決して楽な仕事ではないけれど、 夫は文句ひとつ言わず、毎日黙々と仕事に向かう。 その背中は、私にとっていつも誇らしいものだった。 今日、私は夫の新しい作業服を買いに来ていた。 今着ているものがずいぶんと古くなったからだ。 作業服売り場に足を踏み入れると、 様々な種類のものがあって、少し戸惑ってしまった。 どれも同じように見えるけれど、素材も機能も違う。 「どれがいいのかしら…」 そう呟きながら、私はひとつひとつ手に取って確か…