『世界は「使われなかった人生」であふれてる』 沢木耕太郎著/暮しの手帖社 これは「暮しの手帖」に連載中の映画評論から三十編を選び、前後に映画にまつわるエッセイを配して一冊にしたものである。 (「あとがき」P285) 人生についての考察や、著者の本領である旅エッセイでもない。映画評論である。が、評論というよりも、映画エッセイと言ったほうがこの書物には合っているような気がする。 「使われなかった人生」という本のタイトルに私は食いついた。 老年のひとつの特性として、思わず知らず過去を振り返ったりしているとき、「あのときこうしていたら、ああしていたらどんな人生になったのだろう」と空想したり悔やんだりす…