💠若紫との出会い【源氏物語 61 第5帖 若紫5】 僧都がこの座敷を出て行く気配《けはい》がするので 源氏も山上の寺へ帰った。 源氏は思った。 自分は可憐な人を発見することができた、 だから自分といっしょに来ている若い連中は 旅というものをしたがるのである、 そこで意外な収穫を得るのだ、 たまさかに京を出て来ただけでも こんな思いがけないことがあると、 それで源氏はうれしかった。 それにしても美しい子である、 どんな身分の人なのであろう、 あの子を手もとに迎えて 逢《あ》いがたい人の恋しさが 慰められるものなら ぜひそうしたいと源氏は深く思ったのである。 寺で皆が寝床についていると、 僧都の弟…