唐突な告白だが、私は北海道の出身だ(正確に言えば、出身地の一つは北海道である)。 日本史の研究の界隈では、案外「地元の歴史」を調べている方は多い。日頃暮らす地域のかつての姿や己のアイデンティティを追い求めることは、十分に研究の動機になりうる。日本における日本史研究の意義がアプリオリに問われない本質的な要因もここにあろう。ところが、私の身を振り返れば、研究の関心や動機はそこになかった(詳しく書くと脱線が過ぎるため、ここでは略す)。京都の大学に進学し、中近世移行期の畿内近国を中心に研究を進めてきた。中世における日本列島の中心地域を扱ううちに、同時に地域間の差異や、周縁世界へも興味が生じてきた*1。…