「私は出世することなどを思い切ろうとしていたのだが、 いよいよその気になって地方官になったのは、 ただあなたに物質的にだけでも 十分尽くしてやりたいということからだった。 それから地方官の仕事も私に適したものでないことを いろんな形で教えられたから、 これをやめて地方官の落伍《らくご》者の一人で、 京で軽蔑《けいべつ》される人間にこの上なっては 親の名誉を恥ずかしめることだと悲しくて出家したがね、 京を出たのが世の中を捨てる門出だったと、 世間からも私は思われていて、 よく潔くそれを実行したと私自身にも満足感はあったが、 あなたが一人前の少女になってきたのを見ると、 どうしてこんな珠玉を 泥土…