古文単語

たふ【堪ふ・耐ふ】 こらえる もちこたえる 優れる 解説 ＜自動詞・ハ行下二段活用＞ じっと我慢する、こらえる、耐える。 もちこたえる、支え止める。 優れる、事に応じた能力を持つ。 こらえる 『源氏物語』夕顔 からうして、惟光朝臣参れり。夜中、暁といはず、御心に従へる者の、今宵しもさぶらはで、召しにさへおこたりつるを、憎しと思すものから、召し入れて、のたまひ出でむことのあへなきに、ふとも物言はれたまはず。右近、大夫のけはひ聞くに、初めよりのこと、うち思ひ出でられて泣くを、君もえたへたまはで、我一人さかしがり抱き持たまへりけるに、この人に息をのべたまひてぞ、悲しきことも思されける、とばかり、いと…

しのぶ【慕ぶ・偲ぶ・賞ぶ】 懐かしむ 恋い慕う 思い起こす 賞美する 解説 ＜他動詞・バ行四段活用＞ 目の前にいない人や昔のことなどを懐かしく思う。 美しさや素晴らしさをほめたたえる、賞美する。 ＜他動詞・バ行上二段活用＞ 平安時代に変化したもの。意味は上の一番目と同じ。 懐かしむ 百人一首84 藤原清輔 長らえばまたこのごろやしのばれむ憂しと見し世ぞ今は恋しき百人一首84 藤原清輔 現代語訳 生き長らえるとまた同じように、この頃のことを懐かしく思うのだろうか。つらいと思った昔の世が、今は恋しく思われることだ。 恋い慕う＜上二段活用＞ 『源氏物語』賢木 大将、頭の弁の誦じつることを思ふに、御心…

しのぶ【忍ぶ】 がまんする 隠す 人目に付かないようにする 解説 ＜他動詞・バ行上一段活用／四段活用＞ 感情が表に出ないように我慢する 恋心が周囲の人にわからないようにする。 人目に付かないようにする、人目を忍ぶ。 がまんする 百人一首40 平兼盛 しのぶれど色に出でにけり我が恋はものや思ふと人の問ふまで百人一首40 平兼盛 現代語訳 恋心がわからないようにようにがまんしていたのだが、顔に出てしまった。もの思いしているのかと人が尋ねるほどに。 隠す 百人一首89 式子内親王 玉の緒よ絶えなば絶えねながらへば しのぶることの よわりもぞする百人一首89 式子内親王 現代語訳 私の命よ、絶えるのな…

おもひくんず【思ひ屈ず】 ふさぎこむ 解説 「思ひくっす」「思ひくす」とも。 ＜自動詞・サ行変格活用＞ 悲観的になる、ふさぎこむ。 ＜関連語＞ ▶くんず【屈ず】動詞→ふさぎこむ。 ▶くっす【屈す】動詞→気分が沈む。めいる。「くす」とも。 ふさぎこむ 『更級日記』源氏の五十余巻 かくのみおもひくんじたるを、心も慰めむと。心苦しがりて、母、物語など求めて見せ給ふに、げにおのづから慰みゆく。紫のゆかりを見て、続きの見まほしくおぼゆれど、人語らひなどもえせず。たれもいまだ都なれぬほどにて、え見つけず。いみじく心もとなく、ゆかしくおぼゆるままに、この源氏の物語、一の巻よりしてみな見せ給へと、心の内に祈る…

おもふ【思ふ】 心に思う 人を恋しく思う 心の中で悩む 懐かしむ 希望する 想像する ～という顔をする 解説 ＜他動詞・ハ行四段活用＞ 心に思う、思案する。 恋しく思う、愛する。 心の中で悩む、心配する、悲しく思う。 懐かしむ、回想する。 希望する、心の中で願う。 想像する、予想する。 ～という顔をする、心中の思いを表情に出す。 人を恋しく思う 『古今和歌集』十一 恋一 503 おもふには、忍ぶることぞ負けにける色には出でじと思ひしものを『古今和歌集』十一 恋一 503 現代語訳 人を恋しく思う心には、こらえようとする心が負けてしまった。顔には出さないようにしようと心では思っていたのに。 心の…

ものす【物す】 何かをする（ある いる 来る 亡くなる 飲食する 書く…） 解説 名詞「物」+「す」サ変動詞 何かをするという意味。 文脈によってさまざまな動作を表す。 ＜自動詞・サ行変格活用＞ ある、いる。 行く、来る。 生まれる、亡くなる。 ＜他動詞・サ行変格活用＞ する、なす、行う。 言う、述べる、書く。 ＜補助動詞・サ行変格活用＞ ～である、～ている。 ある 『源氏物語』桐壺 いと押し立ち、かどかどしきところものし給ふ御方にて、ことにもあらず思し消ちてもてなしたまふなるべし。『源氏物語』桐壺 現代語訳 （弘徽殿女御は）たいそう我が強く、とげとげしいところがおありになる御方で、何ほどのこ…

つくろふ【繕ふ】 修繕する 身づくろいする 取りつくろう 手当てする 解説 ＜他動詞・ハ行四段活用＞ 壊れた物などを直す、修繕する。 身なりをきちんと整える。 体裁を取りつくろって、恰好をつける。 身体の悪いところを治す、治療する、手当てする。 修繕する 『源氏物語』松風 昔、母君の御祖父、中務宮と聞こえけるが領じたまひける所、大堰川のわたりにありけるを、その御後、はかばかしうあひ継ぐ人もなくて、年ごろ荒れまどふを思ひ出でて、かの時より伝はりて宿守のやうにてある人を呼び取りて語らふ。「世の中を今はと思ひ果てて、かかる住まひに沈みそめしかども、末の世に、思ひかけぬこと出で来てなむ、さらに都の住み…