「昨日《きのう》も一日おまえを待っていたのに出て来なかったね。 私だけがおまえを愛していても、おまえは私に冷淡なんだね」 恨みを言われて、小君は顔を赤くしていた。 「返事はどこ」 小君はありのままに告げるほかに術《すべ》はなかった。 「おまえは姉さんに無力なんだね、返事をくれないなんて」 そう言ったあとで、また源氏から新しい手紙が小君に渡された。 「おまえは知らないだろうね、 伊予の老人よりも私はさきに姉さんの恋人だったのだ。 頸《くび》の細い貧弱な男だからといって、 姉さんはあの不恰好な老人を 夫に持って、 今だって知らないなどと言って 私を軽蔑しているのだ。 けれどもおまえは私の子になって…