主観性という焦点は像を歪める鏡である。 歴史がわれわれに属するのではなく、われわれが歴史に属するのである。…個人の自己反省は、歴史的生という閉ざされた回路のなかでの瞬時のきらめきにすぎない。それゆえに、個人が持つ先入見は、個人が下す判断よりもはるかにそのひとりの存在の歴史的現実となっているのである。 ハンス=ゲオルク・ガダマー 著/ 轡田收・三浦國泰 • 巻田悦郎 訳『真理と方法 : 哲学的解釈学の要綱』,法政大学出版局,2021年. 映画『君たちはどう生きるか』は、このことを伝えていたような気がしてならない。主人公は塔の中で様々な「世界」を経験する。それはまさに、人間が様々な所与の中で、規定…