『毎日食べたい、しみじみうまい。和食屋の和弁当』/笠原将弘/主婦の友社/平成25年刊 あるとき会社で昼休みにお茶を汲みにいくと、給湯器の近くに設置された複合機で営業部のSさんが何かの本のコピーをとっていた。私がお弁当を食べ終えてまたお茶を汲みにいくと、まだ作業を続けている。何の気なしに覗き込むと、それは図書館で借りたカレーの料理本で、Sさんは一頁、一頁、つまり全部のコピーをとろうとしているのだった。 「買えば。……と思いますけど」 私が思わず声をかけると、Sさんは悪びれずに応えた。 「うんうん。ちょっと作ってみてから、買おうかなと思って」 私的な目的であれば、本のコピーは法律では禁じられていな…