心象風景それ自体を対象にして描写された日本最初の文学作品ということを知ったので読んでみた。簡単に言うと初めて内面が書かれた作品のことである。 ただただ武蔵野の美しい風景を作者の感じたままに書き連ねているのである。今日から見ると、盛り上がりもなく、序章だけで終わってしまったような作品である。歴史的価値はあるが、観賞する価値はなさそうである。 感じたままに、とは、古典からの引用なしに、ということである。江戸時代までの知識人にとって、教養とは古典を熟知していることであった。和歌や紀行文を書くとき、古典からの引用をいかに言いたいことにひきつけて表現できるかが大切であった。ある単語、ある表現は、それが使…