春の草花連中のおおかたが、盛りを過ぎた観がある。待っていたかのように、真打登場だ。ユキノシタである。 園芸関連の雑誌編集やら広告コピーのひねり出しやらに従事していた時代に、ダイモンジソウ(大文字草)を知った。花の形状が特徴的で、京都五山の大文字送り火をも連想させ、気に入っていた。 四十年を経てどこから飛来したものか、似た形状の花が拙宅敷地に姿を観せたときには、感を深くし、少し歓んだ。ユキノシタだった。図鑑を観れば、ダイモンジソウはユキノシタ科ユキノシタ属とある。似ていて当然だ。 春先からこれまでの草むしりでも、草叢を軍手で見さかいなく引っこ抜くようにしながらも、ユキノシタの幼葉だけは避けて残し…