小島のしげみの奥から、影の一滴が無限の闇を広げて、夜がはじまる。 大小の珊瑚屑は、波といっしょにくずれる。しゃらしゃらと、たよりない音をたてて鳴る南方十字星が、こわれおちそうになって、きらめいている。 海と、陸とで、生命がうちあったり、こわれたり、心を痛めたり、愛撫したり、合図をしたり、減ったり、ふえたり、又、始まったり、終わったりしている。 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ 昭和3年から7年にかけて、およそ4年にわたるアジア放浪の旅の記録・回想記である。年に1回・500ドルまでの持ち出し制限付きで日本人の海外渡航が自由化されたのが昭和39年、それより30年以上昔に遡る。昭和4年にツェッぺリンの飛行船が、6…