九条に昔知っていた人の残っていたのを捜し出して、 九州の人たちは足どまりにした。 ここは京の中ではあるが はかばかしい人の住んでいる所でもない町である。 外で働く女や商人の多い町の中で、 悲しい心を抱いて暮らしていたが、 秋になるといっそう物事が身に沁んで思われて過去からも、 未来からも暗い影ばかりが投げられる気がした。 信頼されている豊後介も、 京では水鳥が陸へ上がったようなもので、 職を求める手蔓《てづる》も知らないのであった。 今さら肥前へ帰るのも恥ずかしくてできないことであった。 思慮の足りなかったことを豊後介は後悔するばかりであるが、 つれて来た郎党も何かの口実を作って一人去り二人去…