かへりては かごとやせまし 寄せたりし 名残《なごり》に 袖の乾《ひ》がたかりしを 源氏は 五節の君に違いないと思って返事を送った (五節の君に by 源氏の君) 〜かえってこちらこそ愚痴を言いたいくらいです、 ご好意を寄せていただいて それ以来 涙に濡れて袖が乾かないものですから 【第13帖 明石 あかし】 大弐《だいに》の娘の五節《ごせち》は、 一人でしていた心の苦も解消したように喜んで、 どこからとも言わせない使いを出して、 二条の院へ歌を置かせた。 須磨の浦に 心を寄せし 船人の やがて朽《く》たせる 袖を見せばや 字は以前よりずっと上手になっているが、 五節に違いないと源氏は思って返…