瓊瓊杵尊 (ニニギノミコト) が日向の高千穂に天下られた、ということは周知の神話だが、日本書紀は、別の天孫降臨神話を記してもいる。 饒速日命 (ニギハヤヒノミコト) が天の磐船に乗り河上哮ケ峯に降臨されたという、その雄大な神話は、知るほどにわたしたちを魅了してやまない。 かつてはこの列島の各地に、在地の国津神、祖先神をたたえる同様の神話がほかにも存在していたと考えることもできる。しかし、日本書紀に採録されなかった (ヤマト王権に公認されなかった) それらの神話は、次第に語られることがなくなり、天津神や皇統につらなる天孫に徐々に置き換えられていったのかもしれない。 ヤマト王権には、饒速日命の神話…