あるとき、雄略天皇が葛城山に多くのお供の官人を従えて登られていたところ、向こうの尾根を行くヒトたちがいた。それが天皇の行列と人数も装束もまことに似通っていた。 天皇はお尋ねになられた。 「この国に、わたしのほかに王はいない。あなたは誰か」 すると相手も、おなじ言葉を返された。 「この国に、わたしのほかに王はいない。あなたは誰か」 天皇は大変お怒りになり、御自身も、お供の官人たちもいっせいに弓矢をかまえられた。 すると向こうの尾根のヒトたちも、みな弓矢を構えた。 天皇は仰せになった。 「名を名乗れ。そしてお互いに名乗ってから矢を放とう」 「わたしがさきに尋ねられたので、まずこちらから名乗ろう。わ…