奥山の 松の戸ぼそを 稀《まれ》に開けて まだ見ぬ花の 顔を見るかな🪷 源氏の君に by 巌窟の聖人🧑🦲 〜山奥に住む我が庵の松の戸を珍しく開けると、かつて見たことのない 花のように美しい顔を見たことですよ 🪷第5帖 若紫🪷 京から源氏の迎えの一行が山へ着いて、 病気の全快された喜びが述べられ 御所のお使いも来た。 僧都は珍客のためによい菓子を種々《くさぐさ》作らせ、 渓間《たにま》へまでも珍しい料理の材料を求めに 人を出して 饗応《きょうおう》に骨を折った。 「まだ今年じゅうは山籠《やまごも》りのお誓いがしてあって、 お帰りの際に京までお送りしたいのができませんから、 かえって御訪問が恨め…