この本は、高井さんが七八歳のときに出版された自伝です。「女工哀史」という言葉は誰もが知っている、細井和喜蔵『女工哀史』(1925、岩波文庫所収)が出版されてからです。 わたしはこの本は読んでおらず、幼いころテレビドラマ『あゝ、野麦峠』を観た記憶が朧げにあります。大正末期から紡績業が盛んになり、高度経済成長に合わせて日本の産業は電機・機械工業に移っていきます。都会に製糸工場や紡績工場がどんどん作られ、田舎(貧村)から来た女の子(十五~二十五歳)たちが不潔で劣悪かつ過酷な環境で働かされ、しかも低賃金で、乏しい食事で身体は徐々に衰えていきます。当時の紡績女工は半奴隷状態であり、ある女工は結核で死に、…