コアラのぬいぐるみ──それは、息子が初めてのひとり旅から帰ってきたときのお土産だった。 息子が小学校4年生の時、「オーストラリアへのホームステイ」という学校主催の募集があった。当時としては珍しい企画で、学校にとっても初の試みだった。 4年生から6年生が対象だったが、息子はその中で最年少だった。それでも私は、なぜか迷わなかった。こういう経験は、チャンスがなければできない──そう思った。逆に「参加させない理由」が見つからなかったのだと思う。特に大きな不安もなく、どこか直感のようなもので、自然に送り出していた。 けれど、飛行機に乗って海外へ行くという現実が近づくと、私たち夫婦のほうがそわそわしていた…