18歳の時、私は大学進学を機に実家を離れた。 実家から1時間とかからない所にも美大はあった。それでも、わざわざ実家から離れた地方美大を選んだのは、偏に実家に自由がなかったからだ。実家には一人部屋と呼べるものはなかった。母親が私の部屋に布団を敷いたからだ。高校が遠かったので、家を出るのは一番早かった。帰りは母親と一緒に。それが我が家の当たり前だった。学校から帰ってから、朝家を出るまで。一人になれる時はなかった。プライベートはなかった。そんな家だった。 母親の口癖は「さみしい」だった。どこかに行きたい時も、一人はさみしいからと言って連れて行かれた。私が家で携帯をいじっている時も、漫画を読んでいる時…