僕がこの地を知ったのは昭和40年代初めだろう。父親がこのあたりに家を建てようと土地を探していた。埃だらけの道をバスに揺られて走ったことを覚えている。 次にこの場所を意識したのは中学生か高校生だった。色気だって来る年齢だからそんな小説に惹かれたのだろう。青森は津軽の産んだ作家と言えば太宰治になるが、なぜか石坂洋次郎はそうは出てこない。「青い山脈」「陽の当たる坂道」あたりはそれなりに流行ったのではないだろうか。いずれも映画になったくらいだから。しかし最近は余りその名も見ない。 心配ご無用。自分の書棚には彼の著作は数作ある。特に好きなのは「陽の当たる坂道」だろうか。映画では石原裕次郎がナイーブでぶっ…