アイン・ツバイ・ドライ、♪♫♪♪♪…、 フィア、ヒュンフ、ゼックス、♪♫♪♪♪… 弾むようなメロディだった。歌詞と言えば書いた通りの数字を十までなぞるだけだった。そして合間にはヨーデルだろうかチロル風の音楽が流れるのだ。更には職員もレストランの店員もバイエルンの民族衣装に身を包み胸の谷間にもビールを挟んで一人で五個のジョッキを運んでくるのだった。それはまるでミュンヘンのオクトーバーフェストさながらの光景だった。 しかしそこはノルトライン=ヴェストファーレン州であり、バイエルン州からは六百キロ以上離れているのだ。オランダ国境に近いライン川沿いのドイツの低地地帯になぜ山岳地帯のバイエルンの音楽が流…