最初に観た宮本研作品の上演舞台は、名作『明治の柩』ではなく、とある劇団の分裂騒ぎの引鉄になったといわくつきの『ザ・パイロット』でもなかった。演劇集団変身による代々木小劇場での上演『俳優についての逆説』で、坂本長利さんによる一人芝居だった。一人芝居というものを初めて観て衝撃を受けた。画に描いたような冒険的小劇場公演である。 題名がディドロ『逆説・俳優について』のもじりであるなんぞと気づくはずもない、だいいちフランス哲学なんぞ聴いたことも思ってみたこともない高校生だった。やや経ってから同じ代々木小劇場にて、『ザ・パイロット』が上演されたから、それも観たけれども。 後年あちこちの大劇団公演にて『明治…