頭は冷えた。 再開しよう。 〇鋸屑(おがくず)を濡らして固く搾り、箱に入れて、伊勢海老をその中に埋め、暗いところにおくと、一週間くらゐは、生きたまま保たせることができます。新年など、かうしておくと重宝です。 冷蔵技術の未熟な時代の工夫であった。 人間にとっては重宝だろうが、伊勢海老にとってはどうだろう。狭っ苦しい箱の中、身動きもならず、鋸屑まみれで閉じ込められる心境は。「いっそ一思いに殺ってくれ」と懇願するのではないか。それに対して人間は、「やだよ、殺っちまったらお前、途端に腐り出すじゃあねえか、俺の迷惑も考えろ」と答えるわけで……。 いかん、動物愛護団体の口吻みたくなってきた。 ああ、そうい…