かぐや調の和歌(紫式部日記≒竹取:式部集≒伊勢)] この紫式部三作品の対比(日記18首・式部集126首・源氏物語795首)から、宮中での紫式部は、特に人前や職場でのコミュニケーションが求められる場面において、独自の個性を極力抑えたと見ることができます。ただし、道長の強要など、特別な事情がない限り、この徹底した自制は崩れることはなかったと言えるでしょう。 そのため、『紫式部日記』の18首は、ほとんどの場合、紫式部にとって厄介で避けられない状況で詠まれたものと考えられます。この点に関して、彼女の公的な場での詠歌が、赤染衛門や藤原公任の作品と比べて劣るとする見方もありますが、比較にどれほどの意義があ…