影に対して―母をめぐる物語:遠藤周作著のレビューです。 影に対して: 母をめぐる物語 作者:周作, 遠藤 新潮社 Amazon 遠藤周作がこの作品の公開を望んだかは不明だが、読者としては最高のプレゼントになった 息子にとって母親の存在とはどんなものであるか。 遠藤周作氏にとって母親とは、死ぬまでずっとその姿を追い、見つめ続けていた存在だということがヒリヒリとする感情を交えて文字となって表れる。 平凡な生活こそが幸せだと言う父と、バイオリンを弾くことに没頭するエキセントリックな母親との間で育った主人公の勝呂(すぐろ)は、小説家になる夢を諦め、探偵小説の翻訳をする妻子ある男。 名前は違えど、勝呂少…