2022年6月のブログです * 井伏鱒二さんの『徴用中のこと』(2005・中公文庫)を再読する。 井伏さんは直木賞作家であったが、1941年、太平洋戦争開戦直前に旧日本軍に徴用されて、マレー半島侵略軍の宣伝班として現地に赴く。 いやいやながらの徴用であろうが、当時は断わることなどできない情勢。 書く文章の大部分が軍に不採用になるような状態で、しかし、軍に過度に媚びることなく書き続ける。 軍事体制下における小説家のあり方の一つを見る。 やがて日本軍はシンガポールを占領、昭南市と改名して、占領政策を進める。 アジアの人たちを米英の支配から解放する、といううたい文句は、今のロシアと一緒だ。 そんな中…