七歳から夜も昼も父帝のおそばにいて、 源氏の言葉はことごとく通り、 源氏の推薦はむだになることもなかった。 官吏はだれも源氏の恩をこうむらないものはないのである。 源氏に対して感謝の念のない者はないのである。 大官の中にも弁官の中にもそんな人は多かった。 それ以下は無数である。 皆が皆恩を忘れているのではないが、 報復に手段を選ばない恐ろしい政府をはばかって、 現在の源氏に好意を表示しに来る人はないのである。 社会全体が源氏を惜しみ、 陰では政府をそしる者、恨む者はあっても、 自己を犠牲にしてまで、源氏に同情しても、 それが源氏のために何ほどのことにもならぬと思うのであろうが、 恨んだりするこ…